<峠道や古道、街道は、その時代の状況や都合で、ルートが頻繁に変わったということを聞いている。御嶽古道の外道ヶ原から八王子峠(パノラマ台)の間にも、今使われているルートと違う旧道があるという。>
天神森長瀞橋西詰の登山道の入口を入るとすぐ、花崗岩の大きな岩の間、白砂が混じる急な山道を登ることになる。
下方からは荒川の沢の水の流れる音が爽やかに聞こえてくる。15分ぐらい登ったところでいったん広い舗装道路に出る。吉沢から山裾添いに千田集落入口まで続いている広い舗装道路だ。
平坦な舗装道路を10分ほど歩くと、いよいよ外道ヶ原への登りの山道に入る。しばらくは尾根の左側を登る。やがて尾根の右側を登るようになる。遠くからは木の伐採の音だろうか、チェーンソウの大きな音が聞こえてくる。木々の間から、千田集落の上方にある信玄棒も見える。外道ヶ原に入る手前に千田に行く道が描かれている地図もあるが道は見つからない。
峠状のところを通り抜け、外道ヶ原に入る。私が登ってきた天神森方面を示すもの、吉沢へ御嶽道を下る方面を示すもの、御嶽道をパノラマ台へ向かう方面を示すもの、古いもの新しいもの何枚も道標が立っていた。一休みするのにいい場所だ。
今使われている御嶽道ハイキング道を歩く。しばらくは流れ積もった土と草に隠れたコンクリートの道が続くのだ。ある時代にはここまで畑作業のテェーラーや車が上ってきたのかもしれない。昔畑があったことを示す石垣もあちこちに見られた。歌川広重も描いている外道ヶ原の大きな岩(渋江長伯は”枕石”といっている)が見えてきた。

この大きな岩が見える辺り、左側の山裾を方面を眺めると奥の方に根元が赤いペンキで塗られた木が目に入った。たいらで草もほとんど伸びていないので容易にそちらに近づけた。外道ヶ原の左奥、山裾側に道跡が確認できた。一時使われていた御嶽道か、あるいは作業道だったか、木に赤い印が着いていたり、また赤い境界線の杭が立っていたりで道跡を辿った。外道ヶ原正面に斜面が迫ってくる手前でこの道は、今使われている御嶽道ハイキング道に合流した。千田への朽ちた道標が2本見える辺りだ。
外道ヶ原から三聱返しを登る途中、山道の右奥ちょっと見えにくいところにも千田方面を示す道標が立っていたが、道筋は確認できない。多分廃道に近いだろう。
九十九折りを更に上ったところに、渋江長伯の描いた虫喰岩も確認できる。その手前苔の生えた大きな岩の上に石首が置いてあるものがあるが、これはごく新しいものではないかと聞く。
行き着いたところが太刀の抜き石入口、獅子平からの道と合流する。太刀の抜き石を見に行く。薄曇りではあったが、太刀の抜き石の遥か向こうに富士山を、ずっと手前に千代田湖も眺めることが出来た。

太刀の抜き石入り口・獅子平分岐から、今使われている御嶽道ハイキング道(甲斐市のふる里自然観察路)ではなく、まっすぐ古い御嶽道に入る。しばらく尾根づたいに踏み跡を辿り登る。しばらくすると山道の形態がはっきりするところもあった。深くえぐれた道跡には葉っぱが溜まりこんで歩き難い。
脇の土手状のところの方が歩きやすい。尾根を左下に下っていき今使われている道と合流するような感じのところがあったが、更にそのまま尾根の西側をトラバースしたり、尾根を更に登ったりで進んだが、道筋がはっきりしなくなった。最後に登り着いたところは、今の御嶽道から白砂山に寄る山道ハイキング道の途中だった。古い御嶽道は、もっと手前で今使われている御嶽道ハイキング道と合流していたのだろうと思った。
白砂山に寄り、御嶽道に戻った。もうそこが歌川広が描いた鞍掛岩がよく見えるところだ。

倒れた萬霊塔もすぐ。一時、甲斐市商工観光課が作った旧羅漢寺への入口の案内板があったのだが、今日はなかった。旧羅漢寺跡には気軽に行けない場所ということで、取り外したのかもしれない。

万霊塔から八王子峠までは、100mをいっきに登るのだが、つづら折りの実に登りやすい峠道だった。パノラマ台の下では象の鼻も確認できた。(最近は歌川広重が描いた象の鼻は、ここではないのではないかという説もあるようだが。)

八王子峠の富士山遙拝所からは、先ほど登った白砂山の向こうに薄雲に浮かぶ富士山が望めた。
八雲神社、パノラマ台に寄り、八王子峠から麦坂をゆっくり下った。
今ハイキング道になっている御嶽道(一部甲斐市ふる里自然観察路)とは、別のルート古い御嶽道と思われるところを辿ったが、古い御嶽道だという確証は得られなかった。しかし、いつの時代か人々が辿ったであろう山道だとは思った。
こちらもご覧ください。 2022年1月7日の記事
→ 日本遺産 御岳古道を歩く 金桜御岳集落へ下る古い道
<参考資料文献>
・『甲斐市 ふる里自然観察路 ガイドブック』甲斐市商工観光課 令和2年10月発行
・ホームページ「樵路巡遊 (しょうろじゅんゆう)」~ 古道をできるだけ正確に辿った 金峰山表参道のページ~ by S. Tom.
・YouTube「御嶽道を往く」講師;常説寺住職 高橋栄斉 甲斐市敷島公民館
最近のコメント