カテゴリー「読書・書籍・雑誌」の36件の記事

まだまだ読書力は落ちていないぞ・・・

2017年3月23日 (木)

定年後の暮らしは読書三昧 宮部みゆき「孤宿の人」を読む

 発売されてもう結構日にちが経っている小説のようだが、宮部みゆき「孤宿の人」を読んだ。私の読書ノートをめくってみると最近では、宮部みゆきの本は「かまいたち」「本所深川ふしぎ草紙」「幻色江戸ごよみ」「堪忍箱」など主に時代小説を読んでいる。

 「孤宿の人」は、上・下に渡るかなりの長編で、さらに宮部さん特有の場面場面の記述が特に詳しく長く、読み続けるのに苦労したが、それでも毎日少しずつ上・下を一ヶ月ほどかけて読み終わった。本を開く度に、わくわくしながら読む本がある喜びを感じながら・・・。

 主人公の一人ほうの、純真なまっすぐな心、自然体が、加賀様の心をとらえたのだろう。やがて、心を開いた加賀様がほうに文字や数字を教える下りでは思わず叫んでしまった、この人は今でいう障害児教育の指導の方法を知っている。ほうに文字を教え、ものの見方を考え方を教える加賀様は障害児教育の教師だ。

 「保(ほう)」から「方(ほう)」へ、そして最後には、「宝(ほう)」という名前を与える場面ではさらに思った、この人加賀様=宮部みゆきは、障害児教育いやもっと広く教育の本質を心得ている。

 最後クライマックスでは、まったく涙が止まらなかった。藤沢周平のせみしぐれに匹敵する素晴らしい作品であった。

 ・・・読書はいい。大げさにいうと生きている喜びを感じるときだ。

  「孤宿の人(上・下)」 宮部みゆき 新潮文庫 平成21年12月1日発行

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2017年3月 7日 (火)

定年後の暮らしは読書三昧 井上靖「比良のシャクナゲ」を読む

 井上靖の「比良のシャクナゲ」を読んだ。

 井上靖といえば、「あすなろ物語」は私の読書遍歴のスタートであった。その後読んだ「楼蘭」「天平の甍」「敦煌」などを含めて、この世の中にこんな世界があったんだ、こんな人生があったんだとカルチャーショックの、大げさにいうとある意味私が人生に目覚めた小説であった。Image

 今回読んだ「比良のシャクナゲ」は、今受講している県生涯学習推進センターの講座「山・入門」の横森三男氏に勧められた本である。

 老学徒という「わし」の半生に起きたどちらかというと苦い暗い出来事を、比良の山その頂きに咲くというシャクナゲの群落を思いつつ振り返るという筋書きである。
 学生の頃本郷の下宿で開いた雑誌に載っていたシャクナゲの群落の写真を思い浮かべているのだ。きっと若い感性に切実に訴えるものがあったのだろう。「わし」は、結局そのシャクナゲを実際見ずに終わっている。

 久しぶりに違うジャンルの小説を読みまったく新鮮であった。

 ・・・読書はいい。大げさにいうと生きている喜びを感じるときだ。

  写真;平成15年8月 八ヶ岳硫黄岳赤岩の頭付近で撮影 

「比良のシャクナゲ」 井上靖 新潮文庫「猟銃・闘牛」(平成23年11月八十五版)の中の一編 

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2017年2月24日 (金)

定年後の暮らしは読書三昧 平岩弓枝「御宿かわせみ」を読む

 宮部みゆきの時代小説がなかなか面白かったので、また別なのを読もうと思って探したがどうも現代小説が多く、時代小説では読みたいというものが見つからない。それではと思って本屋さんに時代小説コーナーがあったのでちょっと覗いてみたら、この平岩弓枝の「御宿かわせみ」が目にはいった。

 以前テレビで「御宿かわせみ」をやっていた。でもあまり熱心に観ておらず、高島礼子が女主人公のるいの役をやっていたというようなかすかな記憶があるのみ。細かいことは忘れてしまい思い出せない。

 この平岩弓枝の「御宿かわせみ」は古い発行で、巻末の広告リストを見るとシリーズで10巻20巻とずっと続くようだ。これは楽しみだ。本屋さんで買うと大変だから図書館で借りることにするか。

 藤沢周平のように季節の風景の描写もうまく、一編の長さも適当で、思い立ったときにさっと読めていい。読んでいるときも何か充足感を感じ、読み切った後はああ読んでよかったという満足感幸福感を感ずるのだ。

 ・・・読書はいい。大げさにいうと生きている喜びを感じるときだ。
 

  「御宿かわせみ」 平岩弓枝 文春文庫 2015年1月15日新装版第16刷

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2016年6月24日 (金)

霧ヶ峰「コロボックル・ヒュッテ」のこと

 私の部屋の書棚に平凡社発行の新版「邂逅の山」がある。もうずいぶん前に買い、チラチラッと読んでそのまま他の山の本と一緒に本棚に並べてあった本である。この本を書いたのが、手塚宗求さんで「コロボックル・ヒュッテ」の創設者だ。改めてこの本を通して読んだ。
 
 この「コロボックル・ヒュッテ」を実際見たのは今回(6月14日)が初めてであるが、もしかしたら私が山を頻繁に歩くようになったのは、この「コロボックル・ヒュッテ」の辺りが写っている霧ヶ峰の写真をずいぶん前見たからかもしれないと思う。
 
 今回霧ヶ峰を歩いた時に撮ったのが下の写真だが、この写真と同じような白黒の写真が何かの本に載っていたのだ。上に書いた「邂逅の山」ではない。どの本に載っていたのか定かでないが、正にこの写真と同じような写真であった。不思議と心惹かれ、山へ憧れの思いがより一層強くなったのだった。

<蝶々深山から車山湿原方面に下ったところから車山肩方面を撮った写真である。中央右の林の中に「コロボックル・ヒュッテ」がある。>
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  「新版 邂逅の山」 手塚宗求 平凡社 2002年8月10日初版第一刷

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2016年2月 5日 (金)

アマチュア無線が漫画雑誌に

 先日は「山と渓谷」にアマチュア無線のことが載っていたという記事を書いたが、今度は小学館発行の漫画雑誌「ビッグコミックオリジナル(2016年2月20日号)」にアマチュア無線のことを題材にした漫画が載っていて、またまた嬉しくなってしまった。

 西岸良平の「三丁目の夕日」である。この漫画は、昭和30年代の庶民のほのぼのとした生活を描いて好評の漫画だ。もう沢山単行本ににもなっていて、幾つも映画にもなっている。私のこのブログでもその映画をいくつか紹介している。

 さて、アマチュア無線に関わってであるが、アマチュア無線技士(従事者)免許を取った後、更にアマチュア無線局の免許を取得しなければアマチュア無線は開局できないのだ。(もっともクラブ社団局に所属していれば、個人の無線局がなくても電波は出せるが。)
 この辺りの記述、描き方が不十分の様な気がした。西岸良平は承知の上で話を進めているのかなとも思うが。

 漫画に描かれた器械は、最初は真空管を使ったセパレートの器械だ。アンテナは、50MHz144MHzあたりのアローラインアンテナを使っていたようだが、高校生になった頃は21MHzあたりのビームアンテナが加わっている。しっかり描かれている。
 きっと西岸良平さんもアマチュア無線の免許を持っているのだろうと思った。

 色んな雑誌でアマチュア無線のことを取り上げてくれているが、これに刺激されて若い世代がどんどん免許を取って開局し、アマチュア無線が益々盛んになるのを期待している。

  平成24年1月26日の記事 → 「ALWAYS 三丁目の夕日'64」を観る 

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2015年9月12日 (土)

定年後の暮らしは読書三昧 藤沢周平「よろずや平四郎活人剣」を読む

 またまた藤沢周平の時代小説を、一週間ほどかけて読み終わった。今回は「よろずや平四郎活人剣」。けっこうの長編だが、前回読んだ「雲奔る」や「回天の門」などと違って、連載短編という感じでとても読みやすかった。

 主人公神名平四郎が生家旗本神名家を飛びだし、裏店に住み仲裁屋という商売をしながら、人々の揉め事、困り事、悩み事などを痛快に解決していくというお話である。斬り合い場面がいくつかあったが、いつものように藤沢周平の描写は丁寧で真に迫る。闘いの様子が映画やテレビで見るよりリアルに脳裏に浮かぶ。

 最後、他家へ嫁いでいた許婚の早苗と一緒になるというハッピーエンドの結末も、突飛であの時代、あり得ないといえばそうだが、小説だと割り切って読めばいい。まあ、最初から予想されていた結末だ。

 楽しく安心して読み進められた。「オール読物」に昭和55年10月から昭和57年11月まで連載されたという。

・・・読書はいい。大げさにいうと生きている喜びを感じるときだ。


   「藤沢周平全集 第18巻」 平成5年4月 文藝春秋
      

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2015年7月23日 (木)

定年後の暮らしは読書三昧 藤沢周平を読む 「闇の傀儡師」

 結局今まで藤沢周平の小説も”長編物”を敬遠、後まわしになっていたということだ。この「闇の傀儡師」も結構の長編だ。一週間ほどかけて読み終わった。読書力がそれほど落ちていないことを感じ、嬉しかった。

 知っていて読み始めたわけではないが、この小説は山梨甲州甲府城にも大いに関わりのある、甲州が舞台といってもいいくらいの興味が湧く小説であった。

 主人公の鶴見源次郎と甲州津金を発祥の地とする謎の集団八嶽党との関わりを大筋として小説が展開していく。
 三代将軍家光の弟徳川忠長は、甲斐一国を与えられた時、武田時代にも武田に組しなかった甲州土着武士団、武川衆、津金衆を甲州藩軍制の中心としたが、忠長が改易された後、江戸に出て残った者たちが八嶽党という秘密集団を作った。津金衆が中心で、「八嶽党」の名前の由来もどうも八ヶ岳のようだ。この八嶽党が幕府将軍の世代変わり政変のある度にいつも暗躍しているという設定である。

 藤沢周平の小説にいつもあるように、斬り合いの描写は丁寧で真に迫る。闘いの様子が映画やテレビで見るよりリアルに脳裏に浮かぶのである。

 小説の最終場面で、源次郎が八嶽党を追って、江戸から甲州へ入ったところで、野田尻、犬目、鳥沢、猿橋、笹子、勝沼、石和、韮崎、七里岩、窟観音・・・等々甲州の地名がいっぱい出て来るのだ。
 そして韮崎の先、どの辺りになるだろうか三之蔵か大豆生田辺りか凄惨な戦いが終わった後、津金方面に向かって岩陰に見え隠れ消えていく伊能甚内と奈美の姿を源次郎が見送る場面で小説は終わっている。
 見慣れている茅ヶ岳の長い裾野と塩川の流れに削られた岸壁沿いの細い路が目に浮かぶ。あの路を二人は懐かしい故郷津金に向けて歩んで行ったのだ。
 十数年前職場で一緒だった津金出身のAさんは、もしかしたらこの二人の末裔か・・・。
 

 江戸山形庄内に詳しい小説記述は今までも読んできたが、藤沢周平が山梨にこんなに強く関わる小説を書いていたとは、始めて知った。既述の甲州の地名や、歴史風景、甲斐駒、鳳凰山、茅ヶ岳、金峰山など周りの山々の既述も大変詳しく正確で、先日読んだ「市塵」もそうだが、藤沢周平の旺盛な取材力に驚嘆する。

・・・読書はいい。大げさにいうと生きている喜びを感じるときだ。

 「闇の傀儡師」藤沢周平 文芸春秋社 昭和55年7月15日 第1刷

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2015年7月16日 (木)

またまた、また藤沢周平を読む 「市塵(しじん)」

 「小説現代」に昭和61年9月号から昭和63年8月号まで連載されたという結構の長編だ。今回は読み終わるまで一週間ほど時間がかかってしまった。甲府城に関わる記述が沢山あり、興味を持って読み進めることが出来た。それがなければ、もしかしたら読み終われなかったかもしれない。楽しいおもしろいという小説ではない。

 甲府城主徳川綱豊(*)が五代将軍綱吉の養子となり家宣と改名(1679年宝永元年)六代将軍となる頃から、家宣の子家継が七代将軍になり若くして亡くなった後、八代将軍吉宗の代になり失脚する頃まで、主人公の「新井白石」がどう幕政に関わり、そしてどう生きて行ったかを書いた小説である。おそらく史実に近い小説ではないかと思う。

 新井白石について全く知らなかったというわけではないが、この小説を読み白石の功績(うまくいかなかった部分を含めて)と、人となり(藤沢周平が見た)が分かった気がした。

(*)綱豊は徳川家光の三男綱重の長子。綱豊の後柳沢吉保が甲府城主となる。1709年(宝永6年)綱吉逝去で吉保隠居、子の吉里が甲府城主になった。

「市塵」藤沢周平/講談社/1989年5月25日 全409ページ

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2015年7月 7日 (火)

藤沢周平をまたまた読む 「海鳴り」

 藤沢周平の小説は、心温まるホッとするものが多いが、どちらかというと暗い感じがするものも多い。特に初期の作品はそうだという。この「海鳴り」もどちらかというと暗い小説だ。そして長編だ。今回も県立図書館の書庫から全集第19巻を出してもらい、借りて来て一気に読んだ。

 商人として多少の強引なこともしながら、それでもごく普通の生き方で真面目にがんばってきた新興の紙商人小野屋新兵衛が、人生を振り返るような初老の時期を迎えたのにいやだからといってもいいのか、ひょっとしたきっかけで蟻地獄のように破滅に向かって進んでいく悲劇だ。
 おこうとの愛が深まって行く筋書きに、ページをめくるのももどかしいこともあったが、一方時々やりきれなくなり本を閉じてしまったこともあった。

 解説などを読むと、藤沢周平は最初は二人が心中するという終わり方にするつもりだったそうだが、書き進める中で小説のように二人で水戸へ逃げ下るという筋書きにしたという。

 最後はどちらかというとハッピーエンドで終わり、救われた。よかった。いずれにしても、読み応えのあるいい小説だった。ますます藤沢周平が好きになる。

  「藤沢周平全集 第19巻」 平成6年1月第1刷 文藝春秋
      ( 「海鳴り」「天保悪党伝」の二つの小説が載っている。) 

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2015年6月29日 (月)

定年後の暮らしは読書三昧 藤沢周平「風の果て」を読む

 藤沢周平の小説は、ほとんど読んだつもりでいたが、藤沢周平作家目録リストを見てこの「風の果て」が読んでないことに気づいた。県立図書館で、奥の書庫から出してもらい借りて来て読んだ。
 最近読書力が落ちたという感じがあり、この小説は比較的長編で読み切れるかなという思いがあった。がさにあらず、三日ばかりかかったが一気に読んでしまった。まだまだ読書力それほど落ちてない大丈夫だなと思い嬉しかった。

 主人公桑山又左衛門が、若い頃から仲間と切磋琢磨しながら成長し、仕事で功績を積み重ね、様々な政争を乗り越え最終的には家老になったという話である。出世の途中次第に旧友とも争うようになり、最後には友だちと斬り合い殺してしまう。
 小説の冒頭で旧友から果たし状をもらい切り合いに向かうのだということを軸に、昔のことを思い出しながら話が進むという感じである。

 家老にまでなった自分の生き方を全く否定するわけではないながらも、最終的には友と斬り合い戦い殺してしまうようなこんな人生でよかったのか・・・という思いを持ったということで終わっている。

 読み進める途中、もしかしたらこの小説ずっと以前に読んだことがあるかもしれないと思った。当時はあまり意識に残らなかったのか。またこの小説を映画化ドラマ化したものがあり、その予告編らしきものを観たような気もするがはっきりしない。

 今回じっくりこの小説を読み、藤沢周平の素晴らしさを実感した。また、ふと自分の人生を振り返るような気持ちにもなった。

 「藤沢周平全集 第20巻」 平成4年11月第1刷 文藝春秋
     ( 「風の果て」「蟬しぐれ」の二つの小説が載っている。) 

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